中小企業DX事例
2025年 ソリューション開発従業員数 80名
失敗を糧に、全体最適を目指して
自らの意志を込めた基幹システム選定
連携
支援機関
- IT
コンサルタント - 税理士
- 社会保険
労務士 - 金融機関
- OA商社
- ITメーカー
- その他
ご相談の背景
過去の失敗は繰り返すまい
専門家の知見を借りて自ら基幹システムを選ぶ
テクノロジーで社会課題を解決する事業を営むお客さまからのご相談でした。上場から1年、新たな成長フェーズを歩み始めるにあたり、今後の経営環境の変化に柔軟かつスピーディーに対応できるよう、社内システムを見直そうという声が上がりました。実は以前、営業支援システムを導入するプロジェクトが立ち上がりましたが、途中でコアメンバーが退職してしまい、構想が定まらないままシステム導入が走ってしまったのです。そのためシステムは部門ごとで使い方が異なり、部門間のデータ連携や共有がうまくできず、全社のオフィシャルデータとして活用できない状況にありました。この経験を繰り返すまい。今回は専門家の知見を借りて、営業とバックオフィスがデータ連携し、経営管理がきちんとできる基幹システムを目指そう。新たなプロジェクトチームが立ち上がり、会計システムで導入実績のあるアクタスITコンサルティング(以下AIT)に声がかかりました。
お客さまの現状と課題
部門間のデータ連携や共有は
エクセルによる手作業という非効率な状態
AITがお客さまのシステム状況を調査したところ、メインで使われている営業支援システムとワークフローシステムはさまざまな業務でバラバラに利用され、別のツールも各部門で導入されていました。各部門では自分たちの業務や使い勝手に合わせて導入し、カスタマイズもしていたため、他部門や他業務とデータを連携、共有するという意識はありませんでした。さらに販売や購買の管理、予算管理など会社全体を見るシステムもないため、各部門はデータをエクセルで集計し、そのデータを経営管理部門がさらにエクセルで手集計するという、とても非効率なフローが定着していました。現在のシステムでも連携機能はあったのですが、十分活かしきれていませんでした。この現状を全体像としてまとめた図が以下となります。
【課題】全体最適の視点とプロジェクトマネジメントの不足
前述のとおり、それぞれの部門が独自の判断でシステムやツールを導入してきた結果、全社的に見るとデータの非連携や情報の分散や分断、データの運用フローの複雑化、業務のブラックスボックス(属人)化という非効率を生み出していました。また、情報システム部門の担当者は一人しかいないため、日常のインフラ整備やヘルプデスクに追われ、本来の役割である全体最適を見据えたIT戦略の企画立案や策定に取り組めていません。全社的にも社内IT化への関心が高いとは言えない状況になっていました。根本原因となっているのは過去に構想が定まらないまま、プロジェクトを牽引する旗振り役が不在のまま、システムが導入されてしまったことが大きく影響していました。システムの効果を十分に享受するには検討から導入、利活用まで一貫したプロジェクトマネジメントが必要でした。
目指したゴール
自分たちで構想を策定し、新たなシステムを選ぶ
立ち上がったプロジェクトチームはPMの経理部長を筆頭に、経理、業務、労務、システムの部門からメンバーが集まりました。チームはAITのITコンサルタントとの対話を通じて、自分たちが使うシステムだからこそ、専門家に頼りすぎず、自主的にシステム構想を策定して推進していこうと一致団結し、以下のゴールを掲げました。
- 経営環境の変化に柔軟かつスピーディーに対応できる基幹システムを目指す
- 新たなシステムへリプレイスし、システムに業務を合わせる(カスタマイズしない)
- そのため業務を抜本的に見直し標準化する、全社で共有できる情報基盤を構築する
- 上記を踏まえ、全体最適の視点から新しいシステムを選ぶ
ご支援内容
お客さまが自ら考え、検討していくプロセスに伴走
今回AITではお客さまの自主性を尊重し、あくまでも伴走という形でプロジェクトチームを支援しました。役割としては現状のシステム調査、お客さまのプロジェクトチームとの対話を通じたRFP作成、新システムにふさわしい候補の選定です。新しいシステムを決定するまで、お客さまの要望や考え方を整理、可視化して、新システム決定までのプロセスをひとつひとつ一緒にじっくりと検討していきました。
成果と効果
自ら徹底的に評価検証して選んだ新しいシステム
中でもシステム選定は納得のいくまで時間をかけました。例えば、候補システムのデモンストレーションはメーカーのシナリオどおりではなく、あらかじめ自分たちの業務にシナリオを置き換えて確認するよう準備をしました。システムの仮選定後には導入後の運用課題を潰していくためのテスト(評価検証)を徹底的に行いました。一般的には本契約後に行う工程ですが、本契約まえに実施することで、要件定義後の持ち出しや不確実な要因が払拭でき、また当初計画を見直してより良くすることもできました。これはPMである経理部長のアイデアです。当初の予定より2か月ほど時間がかかり、コストもかさみましたが、プロジェクトチームの誰もが納得できる新しいシステムを選ぶことができ、経営陣からも快諾いただきました。最終的に選んだのはクラウド型ERPとERPフロントシステム。これから導入フェーズに入っていきます。AITの伴走も無事終了しました。お客さまは今回の選定プロセスの中でプロジェクトチームをはじめ社内のIT化への意識が高まっていったそうです。本稼働が楽しみです。
担当専門家より
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田中 慎一
アクタスITコンサルティング(株)
シニアマネジャー ITコーディネータ シニアマネジャー/ ITコーディネータ
システム選定は、他社比較をして値段が安い物、表面的な機能の〇×比較で「〇」が多い物だけで決めるものではありません。長年愛着を持って使うツールであるからこそ、背広のように一度は袖を通してみて着心地を確かめる。少しでも違和感があれば表に出し払拭するという選び方が大事ですね。