中小企業DX事例
2025年 不動産業従業員数 20名
中小企業こそ業務改善の投資効果は大
事業成長を後押しする効率的な経理へ
連携
支援機関
- IT
コンサルタント - 税理士
- 社会保険
労務士 - 金融機関
- OA商社
- ITメーカー
- その他
ご相談の背景
紙と手作業中心の経理では
事業の成長にも支障が出てしまう
少数精鋭で不動産開発まで手掛ける総合不動産業のお客さまは事業も財務内容も堅調でした。その一方で経理部門は部長と担当の2名体制。紙の請求書や手書きメモでの支払依頼など、手作業中心の仕事に日々追われていました。お客さまの税務会計顧問であるアクタス税理士法人の税理士はこの状況を憂慮し、経理の負担を減らすためにも、今後の事業の成長のためにも業務を見直す提案をしようと、アクタスITコンサルティング(以下AIT)とともにお客さまとミーティングの機会を設けました。
明確化した課題
業務の非効率だけでなく
エラーの温床になっている
会議のなかで日々の業務の流れや使っているソフトやオフィスの環境をひとつひとつ詳らかにおうかがいしたところ、次の問題や課題が明らかになりました。
1.非効率な支払業務
請求書の処理、支払指示、仕訳入力はすべて紙ベースの手作業。同一情報をExcel、会計ソフト、インターネットバンキングへ何度も転記している。
2.支払依頼方法が曖昧
経理にはメール、LINE、Teamsなどから支払依頼が届き、その内容も統一されていないため、支払漏れや遅れが生じてしまっている。また、急ぎや至急など曖昧な指示のため、支払処理の優先順位が人によってバラバラ。
3.社内ルールの不徹底
支払の業務フローや承認フローなど社内ルールが社員たちに周知徹底されていない。また、PC操作に不慣れな社員が多いため、紙ベースからどうしても離れられない。
4.原価管理の二重データ入力
不動産開発事業の収支管理はまず前渡金や経費をExcelで集計。その後、会計ソフトへ仕訳登録。そのため突合作業も発生している。
こうした現状では月末繁忙期の忙しさは容易に想像ができます。また入力ミスや処理漏れといったリスクも孕んでいます。そこで私たちはまず取り掛かりとして問題が山積する支払業務に焦点を当てる。ただし部分最適ではなく、経理全体の最適化の観点から支払業務を見直していくことにしました。
目指したゴール
ゴールを実現するために
業務をつくり直してシステムを選ぶ
支払業務の見直しのまえに、私たちはお客さまと「どのような成果を目指して、経理業務を改善していくのか」というゴールを検討し、言語化して共有することにしました。現場のお困りごとを解決するためにとりあえずシステム、という発想で進めてしまうと根本的な問題を見誤り、結果的にせっかく導入したシステムが活用されないまま終わってしまうことが少なくないからです。私たちはお客さまと議論を重ね、次のゴールを策定しました。
【ゴール】----------------------------------------------------------------------------
事業への積極投資を行い、持続的な成長を目指す。
そのため経理はコンパクトに、現体制で効率よく回せる仕組みを構築する。
また、全体最適の観点からアクタスの記帳代行を活用して業務を変える。
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このゴールを実現するために、担当税理士とともに記帳代行を踏まえた新たな業務フローとルールを考え、AITでは“効率よく回せる仕組み“を実現するために、支払業務を支援するクラウドシステムを2製品選び、ご提案。以下の比較表を用いてお客さまと税理士とどちらがフィットするかを議論しました。その結果、採用となったのは「invox」でした。
・invoxの決め手:低コストで標準的な請求書処理機能が網羅されている。OCRによる読み込み、自動登録、支払予定管理ができる。
・候補B:高機能でAPI連携が可能だが、高コスト。
反省点
機能の誤解を招いてしまった
システム選定の際にお客さまに誤解を招いてしまったことがありました。それは「invoxはインターネットバンキングと連携します」という説明です。invoxができるのは全銀フォーマットデータの出力。その出力データをインターネットバンキングに取り込むには人手が必要でした。ところがお客さまは完全に自動で連携して登録してくれるもの(API連携)と捉えられていて、説明と違うというお叱りを受けました。これは明らかに私たちの説明不足です。私たちはお詫びのうえテスト環境をご用意して、実際にデータを出力して取り込む操作を行なっていただきました。すると「こんなにラクなのか」と喜んでいただき、invoxの採用に至りました。このことを反省し、以後は会議の終盤には必ず双方の認識確認を行い、議事録を共有するというプロセスを踏むことにしました。
成果・効果と今後の展望
ミスなくラクになった経理業務は次なる改善へ
invoxの導入から2か月、新しい業務フローや使い勝手などの確認をさせていただいたところ「手作業が大幅に減り、本当にラクになった」という声をいただきました。具体的な成果は以下のとおりです。
【成果1】支払業務の大幅な削減
メール、LINE、Teamsなどからの支払依頼をinvoxで統一したため、処理の優先順位や確認、入力の手戻りが激減し、支払処理に要していた時間が大幅に削減されたそうです。
【成果2】ヒューマンエラーの削減
紙の請求書もinvoxでデータ化され、支払申請から承認、支払実行までが一気通貫で処理できるので漏れやミスがなくなったそうです。手探りで支払先を確認するストレスもなくなったと喜ばれておりました。
【成果3】心理的負担の軽減
インターネットバンキングへ一つひとつ手で登録していた作業がなくなり、ミスなく登録するという緊張感やストレスから解放されたそうです。
これで支払業務の改善は一段落しました。次は不動産開発事業の収支管理に取り組む予定です。前渡金の処理や経費の按分、プロジェクト単位の収支の見える化を実現して、的確な経営判断ができる経理体制を整えていきたいと思います。
担当専門家より
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中原 慎介
アクタスITコンサルティング(株)
アシスタントマネジャー ITコーディネータ 情報処理安全確保支援士 アシスタントマネジャー/ ITコーディネータ/ 情報処理安全確保支援士
“中小企業こそ業務改善の投資対効果が大きい” この事例で改めて痛感しました。業務フローをつくり直して適切なシステムを選べば、限られた人員体制でも最大の成果をあげることができました。そのためには「なぜ改善するのか、どんな成果を目指すのか」をお客さまと話し合っていくプロセスが重要だと再認識しました。また、担当税理士と取り組んだことで最適な業務設計ができたと思います。途中、認識の相違で迷惑をかけてしまいましたが、良好な関係を築くことができました。今後もアクタスグループの総合力でお客さまの業務改善に寄与していきたいと思います。
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伊澤 和紀子
アクタスITコンサルティング(株)
システムコンサルタント システムコンサルタント
「お客さまの実現したいことはなにか?」今回、問題や課題を明確にしたことで、要件にあったシステム選びができ、導入までスムーズに進められました。お客さまには導入まえにテスト環境で操作してもらい、実際の業務イメージをつかんでいただけたことも大きかったです。支援側としても、導入後の業務をどのように行うかをお客さまに具体的にイメージしていただくことはとても重要だと再認識しました。